【税理士監修】認知症になると相続税対策はストップする?意思能力と遺産分割の注意点

2026年03月12日

こんにちは!相続サポート倶楽部です。
超高齢社会を迎え、相続のご相談の中で急増しているのが「認知症」に関連するお悩みです。「親が認知症になってしまい、預金が下ろせなくなった」「認知症の相続人がいる場合、遺産分割協議はどう進めればいいのか」といった切実な声が後を絶ちません。実は、相続税対策において認知症は「最大の壁」と言っても過言ではなく、何の備えもないまま発症してしまうと、多額の税負担を強いられるリスクがあります。

本記事を読むことで、認知症発症後に制限される相続手続き、意思能力がない相続人がいる場合の対処法(成年後見制度)、認知症でも可能な相続税申告、そして発症前に検討すべき「家族信託」などの備えが具体的に理解できます。

この記事は、以下のようなご家族にぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

  • 親に認知症の兆候があり、今のうちに相続対策をしておきたい方
  • 相続人の中に認知症の方がいて、遺産分割協議が進まずに困っている方
  • 認知症になると銀行口座が凍結されると聞き、不安を感じている方

認知症と相続税の正しい知識を持つことで、家族の資産と想いを守るための最善の行動を考えていきましょう。


認知症になると「相続税対策」ができなくなる理由

結論から申し上げますと、認知症によって判断能力(意思能力)を喪失すると、法律上、有効な契約行為ができなくなります。
理由として、日本の民法では、本人の意思に基づかない契約は無効と定められているためです。相続税を減らすための生前贈与、不動産の購入や売却、生命保険への加入などはすべて「契約」であるため、認知症が進行した後はこれらの対策が一切ストップしてしまいます。

認知症発症後にできなくなる主な相続対策をまとめた表は以下の通りです。

できなくなること 相続税への影響
生前贈与 財産を減らすことができず、課税対象額が高止まりする
遺言書の作成 希望の分割ができず、節税に有利な分け方が選べなくなる
不動産の売買・活用 遊休地の活用や、納税資金確保のための売却が困難になる
養子縁組 法定相続人の数を増やして基礎控除を広げることができない

私が以前担当した相談では、お父様が認知症になった後、慌ててご家族が「生前贈与」の書類を作って印鑑を押したケースがありました。しかし、こうした行為は後に税務署や他の相続人から「本人の意思ではない」として無効を主張されるリスクが非常に高いです。無理に対策を進めるのではなく、まずは現在の状況で何が法的に可能かを整理する行動が重要です。


相続人の中に「認知症」の方がいる場合の遺産分割協議

相続が発生した際、相続人の中に一人でも認知症などで意思能力がない方がいると、そのままでは「遺産分割協議」を行うことができません。
理由として、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要な「契約」であり、判断能力のない方が参加した協議は無効になるためです。この場合、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任する必要があります。

成年後見制度を利用する際の具体的なデメリットと注意点は以下の通りです。

  • 成年後見人が選ばれるまで、銀行口座の解約や不動産の名義変更が一切進まなくなります。
    手続きには数ヶ月かかることも多いため、相続税の申告期限(10ヶ月)に間に合わなくなるリスクを伴います。
  • 後見人は「本人の財産を守る」のが仕事であり、柔軟な節税対策には応じてくれません。
    例えば、「認知症の母の取り分を減らして、子供が実家を継ぐ」といった節税に有利な遺産分割は、後見人が拒否するケースがほとんどです。
  • 一度後見人が付くと、本人が亡くなるまで毎月の報酬(費用)が発生し続けます。
    親族ではなく弁護士や司法書士が選ばれた場合、年間数十万円の管理コストがかかるデメリットがあります。
  • 「遺産分割協議がまとまらない」ことを理由に相続税の申告を遅らせることはできません。
    未分割のまま申告を行うと、配偶者控除や小規模宅地等の特例が使えず、多額の納税を強いられる可能性があるため、早急な行動が必要です。

実務の現場では、後見人制度の不自由さに驚かれるご家族が非常に多いです。認知症の相続人がいる場合は、特例を受けるための「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出など、税務上のテクニックを駆使して時間を稼ぐ準備が不可欠です。


認知症でも「相続税の申告」は可能か?納税義務と手続き

被相続人(亡くなった方)が認知症であったとしても、あるいは相続人が認知症であったとしても、相続税の申告義務自体が消えることはありません。
理由として、税金は「財産を所有している事実」に対して課されるものであり、本人の判断能力の有無は関係ないためです。認知症の方に代わって、誰が申告の手続きを行うべきかがポイントになります。

認知症が絡む相続税申告の具体的なポイントは以下の通りです。

  • 相続人が認知症の場合は、成年後見人が法定代理人として申告書に署名・捺印を行います。
    後見人がいない場合は、前述の通り選任手続きから始める必要がありますが、納税期限は待ってくれないため注意が必要です。
  • 認知症の被相続人が持っていた「名義預金」に注意してください。
    本人が管理できなくなった後、家族が「介護費用のため」と良かれと思って移した資金が、税務署から厳しくチェックされるメリット(税務署側)になります。
  • 「障害者控除」が適用できる可能性があります。
    認知症で精神障害者保健福祉手帳をお持ちの場合や、市区町村から「障害者に準ずる」と認定されている場合は、相続税額から一定額を差し引くことができます。
  • 納税資金を確保するために、認知症の方の預金から税金を払う手続きも複雑になります。
    後見人が付いていないと、高額な相続税を本人の口座から直接引き出すことが難しいため、早めに専門家と連携する行動が安心に繋がります。

私が担当した事例では、重度の認知症だったお父様の相続で、障害者控除を適用することで納税額を100万円以上減らせたケースがありました。手帳がなくても「要介護認定」の資料から控除が受けられる場合もあるため、プロの目による資料確認が非常に重要です。


認知症発症前にできる「家族信託」と「遺言」の備え

認知症による「相続の凍結」を防ぐためには、判断能力がしっかりしているうちに対策を完了させておくしかありません。
特におすすめなのが「家族信託」と「公正証書遺言」の組み合わせです。これらを準備しておくことで、万が一認知症になっても、あらかじめ決めたルールに従って財産を管理・承継させることが可能になります。

生前に準備しておくべき具体的な対策は以下の通りです。

  • 「家族信託」で、財産の管理権をあらかじめ子供に移しておきましょう。
    信託をしておけば、親が認知症になった後でも、受託者(子供)の判断で不動産の売却や修繕、相続税対策の継続が可能になる大きなメリットがあります。
  • 「公正証書遺言」で、遺産分割協議そのものを不要にしておきます。
    あらかじめ分け方を決めておけば、相続人の中に認知症の方がいても、後見人を立てずに名義変更の手続きが進められる場合があります。
  • 「任意後見制度」を検討し、信頼できる人を後見人に指定しておきます。
    裁判所が決める見ず知らずの専門家ではなく、自分の意思を尊重してくれる家族に管理を託すための重要な行動です。
  • 生命保険を活用し、受取人を指定して現金を遺しましょう。
    保険金は遺産分割協議の対象外のため、認知症の相続人がいても、受取人がすぐに現金を受け取れる強みがあります。

認知症が疑われる時の相続対策ステップ

親や配偶者に認知症の不安がある際の実践的な対処手順です。

  1. 医師の診断を受け、現状の「判断能力」を確認する:まだ対策が間に合う段階(軽度認知障害など)かを見極めます。
  2. 財産の全容を把握し、一覧表(財産目録)を作る:認知症が進むと、どこに何があるか本人に聞けなくなるため最優先の作業です。
  3. 税理士に「今できる対策」をシミュレーションしてもらう:贈与や信託など、現在の意思能力で可能な範囲を特定します。
  4. 遺言書の作成を最優先で進める:認知症の診断が下りる前、あるいは意思能力があると認められるうちに公正証書で作成します。
  5. 家族会議を開き、方針を共有する:後見制度の利用や家族信託について、親族全員で合意形成を図る行動が後のトラブルを防ぎます。

まとめ

相続において「認知症」は、税金の問題以上に**「家族の自由を奪う」**深刻な問題です。**遺産分割協議が止まる、預金が下ろせない、節税対策ができない。**こうしたリスクは、認知症になってからでは解決できないものがほとんどです。特に相続税の申告が必要な家庭では、対策の「凍結」がそのまま「増税」に直結してしまいます。

しかし、早期に発見し、まだ意思能力があるうちに「家族信託」や「遺言」といった法的手段を講じれば、認知症の不安を抱えながらも円満な相続を実現することは十分に可能です。大切なのは、「まだ大丈夫」と思わず、元気なうちに専門家と一緒に「もしも」の時の設計図を書いておくことです。

相続サポート倶楽部では、税務のプロとしての視点はもちろん、提携する司法書士とともに「家族信託」や「成年後見」などの法的サポートもワンストップで提供しております。認知症の方を抱えるご家族の苦労や不安に寄り添い、最も負担の少ない解決策を一緒に考えます。親御様の物忘れが気になり始めたら、それは相続を考える大切なサインです。まずは一度、お気軽にご相談ください。

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