【税理士監修】小規模宅地等の特例とは?自宅の土地評価が最大80%減になる条件と目黒・世田谷での計算例
2026年08月30日
目黒区や世田谷区にご自宅をお持ちの方の相続では、財産の大半を土地が占めるケースが多く、「預金はそれほどないのに相続税がかかる」というご相談が少なくありません。そこで必ず検討したいのが小規模宅地等の特例です。この記事では、特例の仕組みと使える人の条件、実際にどれだけ税額が変わるのかを計算例で解説します。
この記事の結論
- 亡くなった方の自宅の土地は、330㎡まで評価額を80%減額できる(特定居住用宅地等)
- 使えるのは「配偶者」「同居していた親族」「持ち家のない別居の親族(家なき子)」など、取得する人の条件がある
- 特例を使って相続税が0円になっても、相続税の申告は必要
- 申告期限(10か月)までに遺産分割がまとまっていないと、原則として適用できない
小規模宅地等の特例とは?
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方が住んでいた土地や事業に使っていた土地について、一定の面積まで相続税評価額を50%または80%減額できる制度です。
自宅や事業用の土地に高額な相続税がかかると、住み続けることや事業を続けることが難しくなります。そうした事態を避けるために設けられているのがこの特例です。土地の種類ごとに、限度面積と減額割合が次のように決まっています。
| 土地の区分 | 主な例 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 亡くなった方の自宅の敷地 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 個人商店・事務所など事業用の敷地(貸付用を除く) | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 同族会社の事業に使っている敷地 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | アパート・貸家・月極駐車場の敷地 | 200㎡ | 50% |
自宅(330㎡)と事業用(400㎡)は併用でき、合計730㎡まで80%減額できます。一方、貸付事業用宅地等を含めて使う場合は、面積を調整する計算式によって合計の上限が決まるため、どの土地から優先して適用するかで税額が変わります。
自宅の土地で特例を使える人の条件
自宅の敷地(特定居住用宅地等)の場合、誰がその土地を相続するかによって使えるかどうかが決まります。
① 配偶者が相続する場合
配偶者が取得する場合は、同居の有無や申告期限までの保有・居住の要件はありません。もっとも使いやすいパターンです。
② 同居していた親族が相続する場合
亡くなった方と同居していた親族が取得する場合は、相続税の申告期限まで、その土地を所有し続け、かつ住み続けることが条件です。申告期限前に売却したり転居したりすると使えなくなります。
③ 別居の親族が相続する場合(いわゆる「家なき子」)
亡くなった方に配偶者も同居の相続人もいない場合に限り、別居の親族でも一定の要件を満たせば特例を使えます。主な要件は次のとおりです。
- 相続開始前3年以内に、自分・配偶者・3親等内の親族・特別な関係のある法人が所有する家屋に住んだことがない
- 相続開始時に住んでいる家屋を、過去に所有したことがない
- 相続税の申告期限までその土地を所有し続ける
「賃貸マンション住まいの長男」は該当しやすい一方、「持ち家に住んでいる長男」や「親族名義の家に住んでいる長男」は該当しません。要件が細かいため、必ず事前に確認しましょう。
老人ホームに入居していた場合
亡くなる前に老人ホームへ入居していても、要介護・要支援の認定を受けていたことや、空き家となった自宅を他人に貸していないことなどの条件を満たせば、元の自宅の敷地に特例を使えます。入居中に自宅を賃貸に出すと対象外になるため注意が必要です。
目黒区・世田谷区の土地での計算例
実際にどれくらい変わるのか、仮の数値で試算してみます(路線価は説明用の仮定で、補正は考慮していません)。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 自宅の土地 | 目黒区内・150㎡、路線価70万円/㎡ → 評価額 1億500万円 |
| その他の財産 | 預貯金など 3,000万円 |
| 相続人 | 配偶者と子2人(基礎控除 4,800万円) |
| 特例なし | 特例あり(80%減) | |
|---|---|---|
| 土地の評価額 | 1億500万円 | 2,100万円 |
| 課税価格の合計 | 1億3,500万円 | 5,100万円 |
| 相続税の総額※ | 約1,222万円 | 約30万円 |
※法定相続分で分けたと仮定した相続税の総額。実際の納税額は、配偶者の税額軽減などを適用した後の金額になります。
土地の評価額が8,400万円下がり、相続税の総額は約1,190万円少なくなりました。地価の高い城南エリアほど、この特例の効果は大きくなります。同じ面積でも世田谷区で250㎡・路線価55万円/㎡の土地なら、評価額1億3,750万円が2,750万円になる計算です。
特例が使えなくなる主な失敗例
- 申告期限までに遺産分割がまとまらなかった 未分割のままでは原則使えません。期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、分割後に更正の請求で適用できます。
- 同居の子が申告期限前に自宅を売却した 保有継続の要件を満たさず、80%減額が使えなくなります。
- 「家なき子」の要件を誤解していた 子の配偶者名義の家に住んでいた、などは対象外です。
- 相続税が0円なので申告しなかった 特例は申告することが前提です。詳しくは相続税が0円でも申告が必要なケースをご覧ください。
自宅と貸付用の土地がある場合の併用計算
自宅(特定居住用)と事業用(特定事業用等)は合計730㎡まで80%減額できますが、アパートや月極駐車場などの貸付事業用宅地等を組み合わせる場合は、次の算式で限度面積を調整します。
特定居住用の面積 × 200/330 + 特定事業用等の面積 × 200/400 + 貸付事業用の面積 ≦ 200㎡
例えば自宅の敷地で165㎡を使うと「165×200/330=100㎡」となり、貸付事業用には残り100㎡まで適用できます。減額割合は自宅が80%、貸付用が50%なので、一般的には1㎡あたりの減額金額が大きい土地から優先して適用するのが有利です。路線価の高い自由が丘駅周辺の貸付地と、郊外の自宅を両方お持ちのような場合は、試算して比較する必要があります。
特例を使うときの主な必要書類
| ケース | 主な書類 |
|---|---|
| 共通 | 遺言書の写し、または遺産分割協議書の写しと相続人全員の印鑑証明書/被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本(法定相続情報一覧図の写しでも可)/小規模宅地等についての課税価格の計算明細書 |
| 家なき子 | 取得者の戸籍の附票の写し(相続開始前3年以内の住所がわかるもの)/相続開始前3年以内の居住家屋が自己や親族の所有でないことを証する書類(賃貸借契約書など)/相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有していないことを証する書類 |
| 老人ホーム入居 | 被相続人の戸籍の附票の写し/介護保険の被保険者証の写しなど要介護・要支援認定を受けていたことがわかる書類/施設の入所契約書の写しなど |
書類の不足があると特例が認められないこともあります。特に家なき子の要件は、過去3年間の住まいを客観的な資料で説明できるかがポイントです。
二世帯住宅の扱い
二世帯住宅は、建物が区分所有登記されていない場合、内部で行き来ができない構造でも建物全体を1つの家屋として扱い、子世帯も「同居親族」として特例の対象になり得ます。一方、1階は親、2階は子の名義で区分所有登記している場合、子世帯は同居親族とは扱われず、親の住む部分に対応する敷地しか特例の対象になりません。建築前・登記前の判断が重要です。
まとめ
小規模宅地等の特例は、城南エリアの相続で最も影響の大きい特例です。誰が自宅を相続するか、いつまでに分割するか、申告期限まで保有し続けられるか、の3点を早めに確認しておくことが大切です。土地の評価そのものについては宅地の評価、全体の税額の目安は相続税額シミュレーションもあわせてご覧ください。
参考:国税庁 タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
よくある質問
Q. 小規模宅地等の特例は申告しないと使えませんか?
A. 使えません。特例を適用して相続税が0円になる場合でも、相続税の申告書を提出する必要があります。
Q. 自宅の土地が330㎡を超えている場合はどうなりますか?
A. 330㎡までの部分が80%減額の対象となり、超えた部分は通常どおり評価します。
Q. 相続人ではない孫が遺贈で自宅を取得しても使えますか?
A. 取得者が同居親族や家なき子などの要件を満たせば、相続人以外の親族でも適用対象となります。ただし、孫は相続税の2割加算の対象となる点に注意が必要です。
Q. 老人ホームに入っていた親の自宅にも使えますか?
A. 要介護・要支援の認定を受けていたこと、自宅を賃貸などに使っていないことなどの条件を満たせば使えます。
※本記事は2026年9月30日時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。個別の判断は税理士にご相談ください。
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