相続した実家を売るときの税金|空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例はどちらが有利?

2026年09月18日

親が住んでいた実家を相続したものの、誰も住む予定がなく売却を考えている方は多いでしょう。自由が丘周辺のように地価の高いエリアでは、売却益に対する税金(譲渡所得税)が高額になりがちです。そこで検討したいのが「空き家の3,000万円特別控除」と「取得費加算の特例」の2つの特例です。どちらを使うかで税額が数百万円変わることもあります。

この記事の結論

  • 空き家特例は、昭和56年5月31日以前に建てられた実家などを売ると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる
  • 令和6年1月1日以後の売却で、取得した相続人が3人以上なら1人あたり2,000万円に
  • 取得費加算の特例は、支払った相続税の一部を取得費に加算できる(申告期限から3年以内の売却)
  • 2つの特例は同じ土地・建物に併用できないため、試算して有利な方を選ぶ

相続した不動産を売ったときの税金のしくみ

相続した不動産を売ると、売却価格から取得費と売却費用を差し引いた「譲渡所得」に所得税・住民税がかかります。所有期間が5年を超える場合の税率は、復興特別所得税を含めて20.315%です。

相続した不動産の取得費と所有期間は、亡くなった方のものを引き継ぎます。親が何十年も前に購入した実家なら長期譲渡所得になりますが、購入時の契約書がないと取得費を売却価格の5%で計算することになり、譲渡所得が大きくなりやすい点に注意が必要です。

空き家の3,000万円特別控除の主な要件

項目要件
家屋昭和56年5月31日以前に建築されたもの(区分所有建物=マンションは対象外)
居住状況相続開始の直前に亡くなった方が一人で住んでいたこと(老人ホーム入居の場合も一定の要件で可)
相続後相続から売却まで、事業・貸付・居住に使っていないこと
売却の形耐震リフォームをした家屋を売る、または取壊して土地を売る。令和6年1月1日以後は、売却した年の翌年2月15日までに買主が耐震改修や取壊しをした場合も対象
売却の期限相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までの売却
売却代金1億円以下(他の相続人が売った分も合算)
手続き市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告で適用

令和6年1月1日以後の売却では、その家屋と敷地を相続した相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円になります。

取得費加算の特例の主な要件

  • 相続または遺贈で財産を取得し、相続税を納めた人であること
  • 相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却すること
  • 加算できる金額=その人の相続税額 ×(売却した財産の相続税評価額 ÷ その人の相続税の課税価格)

建物の新しさやマンションかどうかは問わないため、空き家特例が使えないケースでも使える可能性があります。ただし相続税がかからなかった方は使えません。

試算で比較:どちらを使うと有利?

仮の数値で比較してみます。

前提内容
売却したもの昭和50年築の実家(取壊して土地を売却)
売却価格8,000万円
取得費不明のため概算取得費(売却価格の5%)400万円
売却費用仲介手数料・解体費など 300万円
相続した人長男1人(相続税額1,200万円、課税価格1億5,000万円、この土地の相続税評価額6,000万円)
特例なし取得費加算の特例空き家特例
譲渡所得7,300万円6,820万円
(加算額480万円)
4,300万円
(3,000万円控除)
所得税・住民税(20.315%)約1,483万円約1,385万円約874万円

このケースでは空き家特例が約500万円有利です。一方、相続税額が大きい方や、空き家特例の要件(築年・居住状況など)を満たさない場合は、取得費加算の特例が有利になることもあります。

「相続税の申告後に売却すればいい」と思っていると、取得費加算は申告期限から3年、空き家特例は相続開始から3年後の年末という期限を過ぎてしまうことがあります。売却を考え始めた時点でご相談ください。

小規模宅地等の特例との関係

小規模宅地等の特例は相続税の特例、空き家特例と取得費加算は所得税の特例なので、制度としては別物です。ただし、同居親族が小規模宅地等の特例を使う場合は相続税の申告期限まで保有する必要があるなど、売却時期が制約されることがあります。相続税と売却の税金をまとめて試算するのがおすすめです。小規模宅地等の特例についてはこちらの記事で解説しています。

売却を前提にした遺産分割の考え方

実家を売ることが決まっている場合、遺産分割の方法によって税金が変わります。

分け方内容税金面の特徴
換価分割相続人が共有で相続して売却し、代金を分ける空き家特例は相続人ごとに適用(3人以上なら各2,000万円)
一人が相続して売却長男が相続・売却し、他の相続人に代償金を払う(代償分割)特例・税金は相続した一人が負担。代償金の扱いに注意

換価分割で相続人2人が共有する場合、空き家特例は1人3,000万円ずつ、合計で最大6,000万円控除できる可能性があります。一方で、共有者全員の合意がないと売却できないため、関係性も含めて判断が必要です。

確定申告で必要な主な書類

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  • 売買契約書の写し、仲介手数料・解体費用などの領収書
  • 取得時の契約書(なければ概算取得費5%で計算)
  • 空き家特例:被相続人居住用家屋等確認書(市区町村が交付)、登記事項証明書、耐震基準適合証明書など
  • 取得費加算の特例:相続税の申告書の写し、計算明細書

「被相続人居住用家屋等確認書」の申請には、電気・ガス・水道の閉栓や使用中止の記録など、空き家だったことを示す資料が必要です。売却前から書類をそろえておきましょう。

まとめ

相続した実家の売却では、「いつ、誰が、どの特例を使って売るか」で手取り額が大きく変わります。遺産分割の段階で、誰が実家を相続するかを売却の税金まで見据えて決めることが大切です。相続不動産の売却の進め方は相続不動産を上手に売却もご覧ください。

参考:国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

よくある質問

Q. 相続した実家のマンションは空き家特例の対象になりますか?

A. 区分所有建物の登記がされたマンションは対象外です。相続税を納めている場合は、取得費加算の特例を検討します。

Q. 空き家特例と取得費加算の特例は両方使えますか?

A. 同じ土地・建物の売却について両方を使うことはできません。どちらが有利か試算して選びます。

Q. 相続人3人で実家を相続して売った場合、控除はいくらですか?

A. 令和6年1月1日以後の売却で、家屋と敷地を相続した相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円です。

Q. 売却前に賃貸に出してしまいました。空き家特例は使えますか?

A. 相続から売却までの間に貸付に使った場合は、空き家特例は使えません。

この記事の監修者

税理士 浅野 和治(相続サポート倶楽部 代表/浅野税務会計事務所)

1970年開業の浅野税務会計事務所を母体に、目黒区・世田谷区・品川区を中心とした相続税申告・相続手続き・生前対策をサポート。累計相談実績10,000件以上。税務調査に備えた書面添付制度の実施率99.9%。

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※本記事は2026年9月30日時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。個別の判断は税理士にご相談ください。

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