マンションの相続税評価はどう変わった?2024年からの区分所有補正率の計算と令和8年度改正の影響

2026年09月25日

目黒区・品川区・港区などでは、ご自宅や賃貸用としてマンションをお持ちの方が多くいらっしゃいます。以前は「マンションは相続税評価が低く抑えられる」と言われてきましたが、2024年(令和6年)1月1日以後の相続・贈与から評価方法が見直されました。この記事では、新しい評価方法の計算の流れと、どのようなマンションで評価額が上がるのかを解説します。

この記事の結論

  • 2024年1月1日以後の相続・贈与から、分譲マンションは区分所有補正率を掛けて評価する
  • 市場価格に対する評価額の割合(評価水準)が6割未満のマンションは、6割程度まで評価額が引き上げられる
  • 築浅・高層階・敷地持分が小さいマンションほど評価額が上がりやすい
  • 令和8年度税制改正大綱では、相続前5年以内に取得した貸付用不動産の評価の見直しも示されている

マンションの相続税評価はどう変わった?

2024年1月1日以後の相続・贈与では、従来の方法で計算したマンションの評価額に「区分所有補正率」を掛けて評価します。市場価格の6割に満たない評価額になっていたマンションは、おおむね6割の水準まで引き上げられます。

従来は、建物を固定資産税評価額で、土地を路線価×敷地持分で評価していました。高層マンションは1戸あたりの敷地持分が小さく、しかも固定資産税評価額は階数による差がほとんどないため、市場価格の3〜4割程度の評価になることも珍しくありませんでした。この乖離を是正するために導入されたのが区分所有補正率です。

区分所有補正率の計算の流れ

ステップ1:評価乖離率を求める

評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220

記号 要素 計算
A 築年数 築年数 × △0.033
B 総階数指数 (総階数 ÷ 33、上限1)× 0.239
C 所在階 所在階 × 0.018
D 敷地持分狭小度 (敷地利用権の面積 ÷ 専有部分の面積)× △1.195

ステップ2:評価水準を求める

評価水準 = 1 ÷ 評価乖離率

ステップ3:区分所有補正率を決める

評価水準 区分所有補正率
0.6未満 評価乖離率 × 0.6(評価額が上がる)
0.6以上1以下 補正なし(従来どおり)
1超 評価乖離率(評価額が下がる)

求めた補正率を、従来の方法で計算した建物と土地(敷地権)の評価額にそれぞれ掛けます。実際の申告では、国税庁の「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」を使い、所定の端数処理を行います。

計算例:目黒区の築10年・20階建てマンションの15階

前提 数値
築年数 10年
総階数/所在階 20階建て/15階
専有面積/敷地利用権の面積 70㎡/約20.3㎡(敷地持分狭小度 0.29)
従来方法による評価額 3,000万円(建物+敷地権)
  • A:10 × △0.033 = △0.330
  • B:(20 ÷ 33 = 0.606)× 0.239 ≒ 0.145
  • C:15 × 0.018 = 0.270
  • D:0.29 × △1.195 ≒ △0.347
  • 評価乖離率 ≒ 2.958 → 評価水準 ≒ 0.338(0.6未満)
  • 区分所有補正率 ≒ 2.958 × 0.6 ≒ 1.77

このマンションの評価額は、3,000万円 → 約5,300万円に上がる計算です。相続税の課税価格が約2,300万円増えるため、税率20〜30%の方なら数百万円の増税になり得ます。

新しい評価方法の対象外となるもの

  • 地階を除く総階数が2階以下の建物
  • 居住用の専有部分が3室以下で、そのすべてを所有者や親族が住まいとして使っているもの(二世帯住宅など)
  • 事務所・店舗など居住用ではない区分所有建物
  • 区分所有の登記がされていない一棟所有の建物(一棟のアパートなど)
  • 販売用として保有しているもの(たな卸資産)

小規模宅地等の特例はマンションでも使える?

使えます。マンションの敷地権(土地部分)の評価額が特例の対象です。敷地持分の面積が330㎡を超えることはまずないため、自宅マンションの土地部分の評価額は80%減額できます。ただし、建物部分は特例の対象外です。区分所有補正率によって土地部分の評価額が上がると、減額される金額も大きくなります。

令和8年度税制改正大綱:貸付用不動産の評価の見直し

令和7年12月に公表された令和8年度税制改正大綱では、相続開始前5年以内に購入・新築した貸付用不動産(賃貸マンション・アパート等)を、路線価等ではなく取得価額をもとにした価額(地価の変動等を考慮して8割相当とすることも可能)で評価する見直しが示されました。令和9年1月1日以後の相続等からの適用が予定されています。 また、不動産小口化商品についても、取得時期にかかわらず通常の取引価額で評価する方向が示されています。「相続直前に賃貸マンションを購入して評価を下げる」手法は、今後使いにくくなると考えられます。具体的な取扱いは通達の改正内容を確認する必要があるため、購入を検討中の方は事前にご相談ください。

過度な節税を目的としたマンション購入については、令和4年4月19日の最高裁判決で、路線価等による評価ではなく鑑定評価額による課税が認められた例があります。評価ルールの範囲内であっても、取得の経緯や目的が問われることがあります。

マンションをお持ちの方が検討したい相続対策

① 評価額と納税資金の確認

新ルールで評価額が上がると、相続税額も増えます。まずはお持ちのマンションの評価額を計算明細書で確認し、預貯金や生命保険で納税資金が足りるかを試算しましょう。生命保険の死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。

② 誰が相続するかを決めておく

自宅マンションは、配偶者や同居の子が相続すれば小規模宅地等の特例の対象になります。遺言書で取得者を明確にしておくと、申告期限までの分割がスムーズになります。

③ 生前贈与との組み合わせ

マンションを贈与する場合も新ルールで評価します。贈与税・不動産取得税・登録免許税の負担も含めて、相続で渡す場合と比較して判断します。

④ 賃貸中のマンション

第三者に貸しているマンションは「貸家」「貸家建付地」として評価が下がり、要件を満たせば小規模宅地等の特例(貸付事業用、200㎡まで50%減額)も使えます。ただし令和8年度税制改正大綱の見直しにより、相続前5年以内に購入した物件は評価が大きく変わる可能性があります。

まとめ

マンションの相続税評価は、2024年から「市場価格の6割程度」を目安とする仕組みに変わりました。築浅の高層マンションをお持ちの方は、以前の感覚で相続税を見積もると過少になるおそれがあります。ご自身のマンションの評価額を早めに確認し、納税資金や遺産分割の準備を進めましょう。全体の税額の目安は相続税額シミュレーションで確認できます。

参考:国税庁 タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月)

よくある質問

Q. マンションの新しい評価方法はいつから適用されていますか?

A. 2024年(令和6年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得したマンションから適用されています。

Q. 古いマンションでも評価額は上がりますか?

A. 築年数が古いほど評価乖離率は小さくなるため、評価水準が0.6以上となり補正がかからないケースもあります。個別に計算して確認が必要です。

Q. 一棟の賃貸アパートにも区分所有補正率は使いますか?

A. 区分所有の登記がされていない一棟所有の建物は対象外です。ただし令和8年度税制改正大綱では、相続前5年以内に取得した貸付用不動産の評価見直しが示されています。

この記事の監修者 税理士 浅野 和治(相続サポート倶楽部 代表/浅野税務会計事務所) 1970年開業の浅野税務会計事務所を母体に、目黒区・世田谷区・品川区を中心とした相続税申告・相続手続き・生前対策をサポート。累計相談実績10,000件以上。税務調査に備えた書面添付制度の実施率99.9%。 プロフィールを見る
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※本記事は2026年9月30日時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。個別の判断は税理士にご相談ください。

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